エグゼクティブ・サマリー
- 切替は「据付が終わったら始めるもの」ではなく、要件定義の段階から計画する工程である。 切替日、旧業務の扱い、戻し方を決めないまま構築に入ると、最後の数週間に判断がすべて押し寄せる。
- 試験は場所と目的で3段に分ける。 工場立会検査(FAT)で機体単体の性能を、現地受入試験(SAT)で現場の床・電源・ネットワーク・実物のワークとの組み合わせを、並行稼働で実際の業務量と例外を確かめる。どれかを省くと、その段で見つかるはずの問題が本稼働の初日に出る。
- 並行稼働の期間は日数ではなく「出会うべき事象」で決める。 繁忙日、月末処理、品種切替、夜勤の引継ぎなど、本稼働で必ず起きる場面を一度ずつ通過するまでは旧業務を止めない。
- 切替判定は会議で行い、合格条件を事前に数字で置く。 「だいぶ安定してきた」という印象で切り替えると、判断の責任が誰にもなくなる。判定者・判定項目・不合格時の扱いを先に文書にする。
- 切り戻し計画のない切替は、切替ではなく賭けである。 旧設備・旧手順・旧要員をいつまで残すか、何が起きたら何時間以内に戻すかを決めておけば、現場は安心して新しいやり方に移れる。
ロボット導入の計画書を見ると、構想、要件定義、選定、設計、構築、そして「本稼働」と工程が並んでいる。ところが、構築の最終日と本稼働の初日の間に何をするのかが、1行で済まされていることが多い。「試運転」「立ち上げ」とだけ書かれ、期間も合格条件も、誰が判断するのかも決まっていない。
実際の現場では、この隙間で問題が噴き出す。据付は予定どおり終わり、ベンダーの試験も通った。それなのに、実際の業務量を流した初日に処理が追いつかず、作業者が手作業で穴を埋めることになる。旧設備はすでに撤去したため戻れない。現場には「ロボットのせいで残業が増えた」という印象が残り、定着化の出発点から不利になる。
本稿は、導入7工程のうち③構築スケジュール/ToBe業務設計から⑤開発・導入、⑥定着化への橋渡しにあたる「切替」を、独立した計画として設計する方法を示す。対象は工場のセル、倉庫の搬送・仕分け、検査工程、施設の清掃・搬送など、既存の業務を止めずにロボットへ移したいすべての現場である。